あなたのおかげで、ありがとうございます。

「京都市北区上賀茂の柊野で屋根の葺き替え工事をした話」と、「屋根の上にジェイソンがっ!!スプラッタな話」は、実は、何と一つにつながった話なんですよ。

[tegaki]ええぇ〜?なんで〜? [/tegaki]

っと思いますか?実はですね。 「スプラッタな話」で、大けがをしたわたしを急いで病院に運び込んでくれたのは、屋根の下で働いていた大工さんなんですが、 「柊野の屋根の葺き替え現場」というのは、その、病院に運び込んでくれた大工さんの生まれ育った実家なんですよ。

R0011440その大工さんから、写真のような状況(凍害)で瓦が割れて、雨が漏るようになったのでちょっと見てもらえないか、と連絡があったのが、2月の後半でした。

[tegaki]うれしかったですね〜。[/tegaki]

それはもう素直にうれしかったですよ。だって、大工さんを長くしていたら当然、色々な現場で色々な屋根屋に出会ってきたはずなんですよね。しかもここは1200年の都、京都です。「京都の瓦屋といえば○○」、というように言われる屋根屋さんだってたくさんあります。そんな中でわたしを選んでくれた。しかもそこは自分が生まれ育った思い出の家なんですよ。その家を守っていく屋根をわたしにまかせて下さるという、その気持ちが本当に嬉しかったです。 [tegaki]ありがとうございます。[/tegaki]

その大工さんは、岩倉の中濱工務店さん。中濱さんはすごい大工さんなんですよ。以前まだ他の工務店さん(仮にA工務店とします)にお勤めだった頃、ちょうど悪質リフォーム詐欺がはやった頃のことだそうですが、ある出来事があって独立を決められたそうです。

A工務店さんは、とある大きなリフォーム会社の下請けに入ったそうなんですね。で、そのリフォーム会社がひどいところだったそうなんですよ。A工務店さんとしては現場を中濱さんにまかされていて、A工務店の親方は別の全く関係のない現場に行っておられたそうです。だから、現場で何が起こっているか親方はよく知らなかったそうで、そこがそんなリフォーム会社だとはわからなかったんでしょうね。ところが、現場にいる中濱さんにはわかるんですよ。

営業がやってきては高齢者のお施主さんに次々と、ここも危ない、こっちもダメだ、ついでにこれも…、どんどんと工事金額が膨らんで行くのを目の当たりにしたそうです。まだその当時は、悪質リフォームが社会問題になる前でしたから、そういうとんでもない会社があるということは思いもつかなかったでしょうが、さすがに目の前で起こっていることはおかしいと思って、親方に直談判したそうです。

こんなおかしな工事は、人として出来ないから手を引くべきだと。現状が飲み込めない親方は、まあなんとか我慢してやってくれというような感じだったそうです。だけど、「人として出来ない」とまで思い詰めていた中濱さんは、だったら、明日からの収入がなくなってもかまわないから、俺は止める!そういって、そのままA工務店さんをやめたんだそうです。

なかなか出来ないですよ。誰だって、自分の生活がかかった仕事を、簡単に止めることはできません。だけど自分の収入を確保することよりも、断固として人としての道を踏み外さないことを選んだんですよね。話としては聞くかもしれないけれど、いざ自分の身にそれが降り掛かってきたら…。なかなか出来ることではないと思いますよ。

それが契機となって独立。今は職人さんを使うほどになっておられます。まあやっぱり、その時に波が来ていたんでしょうね。

わたしより年齢はちょっとだけ若いんですが、本当に昔気質の親方気質を持った方で、今はなかなかあんな真っすぐな大工さんはいないんじゃないかなあ。 ああいう大工さんに仕事をしてもらえる人は、とてもしあわせだと思います。

以前話をしていて聞いたことがあるんですが、その中濱さんが職人として尊敬する人が、実は自分の親父さんなんだそうです。親父さんは今も現役の腕のいい左官職人さんなんですよ。その親父さんは「恥ずかしい仕事をするな。」ということをいつも言っていたそうで、そんなところから、間違った仕事は絶対出来ないという気持ちが生まれたんでしょうね。

はい、そうです。今回工事したのは、その親父さんのお宅です。だからだから、これまた本当にうれしいんですよ。工事させていただけて、本当にうれしかったです。

「職人さんの家」であるし、わたしの恩人である中濱さんの親父さんの家でもありますから、今回は普段以上に気合いが入りましたねえ。

やっぱり職人さんの家である限り、何か一つ品のいい工夫をしたかったですしね。感謝の想いも込めて、お値段はそのままに、棟の仕様を見積りよりも数段グレードアップしました。その結果が、若葉カエズの鬼瓦と薄のしの空かし積み工法なんです。

さあこの瓦は、これからの数十年間、この家を守っていきます。どうか、たくさんのしあわせが、この家で引き続き育まれますように…。

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