「親方」といえば、ほんまに今あるのは親方のおかげやと思います。

徳島の大工さんのブログに、親方についての記事がありました。→親方 – 大工な生活。

親方と言えば、やっぱり今こうしているのは、親方のおかげだと思いますねえ。

私はもともと、屋根屋になろうとしてこの仕事を始めたわけではないんです。実は、きっかけはアルバイトでした。

今からもう20年以上前のことですが、当時大学生だった私は、瀬戸内海に浮かぶある島にある教育キャンプ場のリーダーとして、小学生の子どもたちの世話をするボランティアに夢中になっていました。実は、今でも野外教育についてはあちこちでかかわっていて、京都キャンプ協会というところで、運営委員という役職をいただいていたりします。日本キャンプ協会公認の一級キャンプディレクター資格も持っていたりします 。しかも、一級瓦葺き技能士の資格よりも早くに取っていたりします。

まあとにかく(^_^)、当時は夢中だったんですよねえ。

で、キャンプのリーダーとかしていると、夏の間は島に行きっぱなしとか、京都にいないんですよ。そうすると、必然的に長期のアルバイトがしにくいんですよね。それで、短期のバイトをコロコロ変わりながら生活費の足しにしていたわけです。

確か、平成2年の夏が終わったころだと思うのですが、その時に京都に戻って来てまたまたバイトを探しました。アルバイトニュースをみていると、そこにあったのが、当時、左京区浄土寺に本店があった中出瓦店さん(現在は左京区岩倉に本店があります。)のバイト募集でした。それで、ほんの軽い気持ちで、応募したんですよね。

そのバイトが、その後の人生を変えましたねえ。

たまたまその時、中出瓦店さんは浄土宗の古刹、黒谷さんの中のお寺の葺き替え工事をしておられて、そこにかかわることになったんです。もちろん最初は、ものを運んだり、掃除をしたりばかりですよ。もう、毎日あせまみれ埃まみれでした。

それはもう大変な仕事でしたけれど、やっているうちに、楽しくなって来たんですね。有名なお寺さんの、普通の人は出入りできないような場所で、100年以上前の職人さんが腕を振るった建物に手入れをするという仕事。しかも、建築の仕事の中でも、アウトドアでもっとも天気に敏感な仕事ですから、次第に空気のにおいで、なんとなく天気の変化が読めるようになって来て、野外教育のリーダーとしてのカンも磨ける。実家は山の中で林業を営んでいるわけですが、山で育った材木が、このように組み合わさって建物になっているんだというのが、屋根の葺き替え工事で野地をめくると、上からよくわかること…。ともかく、どうもピッタリの仕事だったんでしょうねえ。

楽しい仕事というのは、何でも前向きになってできますよね。私は、入ってすぐに年配の、ちょっと難しい職人さんについて、手元として下働きしたのですが、これはあとから聞いた話なのですが、あんまり気難しいのでこの職人さんについたアルバイトは、たいていすぐにやめてしまうそうなんですよ。ところが毎日ワクワクしながら仕事をしていた私は、叱られたりしても、前向きに「はいっ!」ってな感じでやっていたんでしょうねえ。一ヶ月ほどした時に、その難しい職人さんが、「あの子はなかなかよく働くでぇ」と、親方に言ってくれていたらしいんです。これも、何年か後になって聞いたんですが…。

そんなこんなで、屋根の仕事にはまってしまったんですねえ。

親方はね…、
「夢を持ってボランティアを一生懸命やっているなら、俺はできる限りサポートしてやるから、そのかわりしっかり働いてや。」
そういってくれました。

実際次の夏。一ヶ月間、キャンプのために休んだ時も心良く送り出してくれ、「また帰って来たら、うちに来てや。」と…。

こうして、いつの間にかミイラ取りがミイラになった如く、屋根に夢中になって、そして本職になったんですよね。

実はこれもあとから聞いたのですが、自分のやりたいことに夢中になっている私が、親方はちょっとうらやましかったそうです。自分は瓦屋の4代目として、子どもの頃から跡を継ぐもんだと思ってきたから、それ以外に夢を描く事ができなかったそうで、だからお前のように夢を持ってやっている若いもんを応援したいんだと…。

実はもう、今、私は親方に会う事ができません。私はほぼ10年間中出瓦店さんで働いて、そして他に移ったんですが、そのあと5年ほどして、親方はまだ40代後半でしたが、病に倒れて帰らぬ人となりました。だから今、もう親方に直接会うことはできないんです。

私も今アルバイトを使う立場になって、親方と同じように、夢を持った若者を応援したいと思っています。実際にうちのバイト君たちは、いろいろ思いを持っています。がんばっています。そしてうちに来た時は、仕事もがんばってくれます。

現場で本当に良く働いてくれるので、大工さんからよく、「おまえんところの若い子は、文句も言わずによく働くなぁ。今時の子にしては珍しいでぇ。」と言われます。ありがたいなあと思います。

本当に、縁は不思議なものですねえ。親方とのご縁に、本当に感謝します。ありがとうございました。そして縁あってうちで働いてくれているバイト君たち、君たちは本当によくがんばってくれている。ありがとう。そして、たくさんのお客様に恵まれて、心から感謝いたします。ありがとうございます。

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4 thoughts on “「親方」といえば、ほんまに今あるのは親方のおかげやと思います。

  1. ご紹介ありがとうございます。
    ボクも大工になりたいと思うきっかけは学生時代の
    建築現場の廃材処理のバイトからでした。
    一見のバイトをご飯に連れていってくれて
    色々丁寧に家の事を教えてもらった覚えがあります。
    そういう人間関係が好きで大工になった所もあります。
    今はその立場になりましたが配達の子などを見ると
    昔の自分を思いだしてジュースとか、あげたりしてしまいます。
    人を育てるには まず人を大事にしないとダメだと思います。

    ぽちっておきますね。

  2. コウリョウさん。ようこそおこし下さいました。コメントありがとうございます。

    そうですねえ。「人を育てるには まず人を大事にしないとダメ」。同感です。

    はたして自分にできているのかどうか、難しいですが、でも、人は大事にしようと心掛けています。

    お客さんにだけではなく、従業員にも、協力業者さんにも、そして資材を搬入してくださる問屋さんや運送屋さんも、大切にしたいと思っています。

    だから私は、第一歩として、なるべくたくさんの機会を捕まえて、「ありがとう」と言葉にして伝えようと努力しています。そこから先が、なかなか難しいですけどね。私は、自分の店を、人が育つ場にしたいと思っているんですよ。精一杯、顔晴り(がんばり)ます。(^^)

  3. 初めまして、京都で瓦屋をしています(しん)です。

    私は瓦の学校に行ってるに中出さんにお世話になりました。 卒業式の時に病院から学校まで来て頂いて私達の卒業を祝って下さいました。
    仕事でも何回かお世話になり大変勉強になりました。
    いきなりの訪問ですいませんでしたm(__)m

  4. しんさん、コメントありがとうございます。すっかりお返事が遅くなってしまいました。
    ここのところ仕事がつまりまくっていて、ちょっと大変でした(^^;;;

    そうですかぁ。確かに、訓練校にもかかわっておられましたね。
    面倒見がよい方でしたから、たくさんの人に慕われていましたよね。

    本当に、コメントありがとうございました。
    また来てくださいね。

    では…。

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