数年前、ご主人がインターネットで当店のホームページを見つけ、お電話いただき、母屋の雨樋のメンテナンスをさせていただいた衣笠のWさん。ご主人は、なんでもご自分でDIYでメンテナンスされていらしたのですが、「わしももう歳だからな」ということで、落ち葉のそうじと、勾配調整をしてほしいということでした。
その後、2年おきぐらいにお電話いただいてその都度、樋の修繕、瓦の修繕とさせていただいてきました。
今回は奥様からお電話いただき伺ってみると、ガレージの雨樋で手の届く位置の樋なんですね。以前から「この樋もしましょうか?」とお声がけしていたんですが、ご主人が、「これくらい手が届けば年寄りでもできるからいいよ」とのことで、手をつけていなかったものだったのです。と、奥様が「実は、主人が昨年秋に、亡くなったんですよ。その後、雨が降るとこの樋が気になって…。主人がずっと、わしが治すって言ってたんですけど、とうとうそのままいってしまいましたんや。」とのこと。
その、ご主人さんがご自分でなんとかして取り付けられた雨樋がこちらです。市販品を使って、いろいろ創意工夫してなんとか取り付けられています。
本来このアルミ枠の波板の屋根の場合、下手側の枠の内部に雨樋は組み込まれているのですが、このガレージの場合、
- 波板部分の面積が大きく、雨水の総量が多い。
- すぐそばに台杉が植えられていて細かい落ち葉が多く、枠内の狭い雨樋はすぐ詰まる
というような事情があって、後からご主人がDIYされたものと推察されます。となると、やはり「アルミ枠に内蔵されてますよ。」で済ますことにはいきません。かと言って、おんなじように市販品を無理やり取り付けるのもプロとしてはどうかと思います。そこで、ゲリラ豪雨並みの雨水でもちゃんと受けられ、なおかつ落ち葉も掃除しやすい雨樋を、カスタムで現地製作することにしました。
材料は、0.35mm厚、横幅1.5尺の耐摩カラーガルバリウム鋼板。日鉄住金鋼板製。ここから現地にてサイズを合わせ、折り込んでいきます。折り込みには、写真ではコイルの手前の道具箱の中に入っている東北エスパル社製のローラー折り器等の手工具を使います。
そうして折り込んだものがこちら。単体で水勾配が取れるように、水上側と水下側で深さが変わるように工夫してあります。こうすると、天端をアルミ枠に合わせて水平に取り付けても、自然と水勾配が取れます。
で、取り付けた状態がこちら。かなり大容量になったので、ゲリラ豪雨でも余裕で受け止めてくれます。また、大きくなったぶん逆に積雪の影響も受けやすくなるので、天端で補強を入れて、ダレるのを防いでいます。
下から見ると、前の市販品無理やり取り付け雨樋に比べると、かなりスッキリしたのがわかります。下端には、荷重に耐えられるようにアルミの受け具を入れましたが、こちらはちょっと唐草状の意匠を凝らしたものを使用しました。
これでもう、当分破損することはないでしょう。定期的に杉の葉を掃除してあげれば十分です。
きっとご主人さんも、心残りだったんではないかと思いますが、これで安心ですよ。安らかにお休みください。